統一教会に本当にダメージを与えたいなら…

 安倍殺害で統一教会自民党の関係が色々とクローズアップされているわけですが、なぜ統一教会に「需要」があるのか学者も含めてよくわかっていないなと感じます。単なる票田として見たり、金銭的なやり取りがあったのではないかと考えたり、勝共連合の古い付き合いでそうしているのだと論じても、たぶん4割くらいしか理解できないでしょう。残り6割ですが、4割が韓国北朝鮮との関係、2割がその他米国等でのコネクションのためくらいに考えたほうがいいと思います。

 

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 上の記事で書いたように、統一教会は韓国社会の中で胡散臭い存在として見られていても、統一グループ(統一教会系の事業グループ)は社会の中で評価されています。ツイッターでは統一教会が日本ほど暗躍している国は無いみたいな話が流れてきましたが、社会の隅々まで影響があるのはむしろ韓国のほうです。

 統一グループの一和のメッコール(ジュース)はどこの売店に行っても韓国では売られているし、統一教会系の大学である鮮文大学は一般の入学者の多い中堅大学です。仙和芸術中学・高校は芸術系のエリート校で毎年ソウル大進学者数トップ10に入るほどの学校です。また他にも一般に開かれた統一教会系の中学高校もありますが、驚くべきことに、そこには自治体の学区指定で半強制的に非信者の一般の学生たちが割り振られ通っているし、謎の進学実績で微妙に人気校であったりもします。そして、統一教会系の世界日報は全国紙で、これも韓国のどこに行っても売店で売られています。統一教会幹部が韓国のプロサッカー連盟の会長を務めたこともあります。

 政治に至っても右派だけではなく左派とも交流があるし(だからこそ安倍がメッセージを送ったイベントに、文在寅政権初期に首相を務めた丁世均も祝辞を送っている)、北朝鮮ともつながりがありながら反共で南北統一を目指している、という点で、韓国の中では重要な政治的アクターとして挙げられます。

 

 霊感商法や高額献金等を問題にし、自民党統一教会の関係を批判するのは真っ当なことですが、なぜこの人達が統一教会と交流を持とうとしているのかについては国内の論者は本当に分析が不足しているように感じます。韓国朝鮮生まれの宗教なのに、(中西尋子先生を除き)統一教会に詳しい「専門家」が韓国語の資料を読まない(たぶん読めない)のも大きいのではないでしょうか。

 本気で統一教会にダメージを与えたいなら、なぜそこに政治家の「需要」が生まれるのかについて適切な理解が無ければ難しいでしょう。私の予想では、今回を機に多くの政治家がとりあえず統一教会とのコネクションを切ると思いますが、10年くらいしたらしれっと戻ってくるのではないかと考えています。そこに統一教会しか持てないつながりがある限り。

 本気であるならば、テレビに映っている日本の統一教会幹部を叩いてもあまり意味はなくて(この人達の教会内での権力は大したものではないし、高額献金で金銭的な利益を得ているわけでもない(悲しいくらい貧乏))、韓鶴子総裁や韓国の幹部、そしてそれを支えている韓国社会にメスを入れないとダメだと思いますよ。そうなると嫌韓言説に結びついたり、国際問題に発展しかねないと思いますが、いまの湧き上がっている世論を見るに、反統一教会の知識階級の人達が上手くそれをコントロールできるとは到底思いませんが。そもそも本気ではない、憂さ晴らしに近いものを感じるので杞憂でしょうね。